需要の高い臨床心理士

少し前までは、精神的な疾患といえば、
精神科医による治療やカウンセリングが主流でした。
しかし、現代社会においては働き過ぎや
過度な競争・あふれる情報・複雑な人間関係などにより
ストレスを抱える人が増えています。

不登校や出社拒否・自殺といった問題が表面化し、
うつ病などの精神疾患にかかる人やメンタル面で
悩みを抱える人が多くなっているのです。
精神科にかかったり、休職や自殺に追い込まれる前に手を
差し伸べることの必要性が増しており、
企業などでは専門の担当者を置くなどメンタルヘルスケアに力を入れています。

また、学校や職場などで事故や事件が発生したり、
大きな災害が発生した場合には、関係者や被害者の受けたショックを緩和し、
PTSD(心的外傷後ストレス障害)を防止するために、
専門のカウンセラーを派遣したというニュースをよく見聞きすると思います。
今は精神状態が悪化してからの治療よりも予防に重点が置かれてきているのです。
こうした予防医療の現場で求められているのが臨床心理士です。
精神疾患の予防や今あるストレスを取り除く役割を期待されています。

もっとも、臨床心理士は治療の現場においても活躍していますがこの点、
精神科医による治療は必ずしも心の悩みの根本にアプローチするのではなく、
その状態を抑制するための投薬など一時的で
即効性のある治療がメインになってしまうことが起こるのです。

どのような仕事をしているのか

これに対し臨床心理士は、まず人の話に耳を傾け、
信頼関係を築いて凝り固まった心をほぐし、
カウンセリングや伝統的な心理療法を用いて、
ゆっくりと時間をかけて治療を行っていきます。

こうしたアプローチをとることで、
人が恐いとか病院での治療は受けたくないと思っている方にも、
心の病から解放される機会を与えていくことができるのです。

なお、メンタルヘルスに関するカウンセリングを行う人たちには、
心理カウンセラー・セラピストなど様々な肩書がありますが、
臨床心理士は、日本臨床心理士資格認定協会の認定を
受けた心理専門職を指しています。

臨床心理士資格が登場したのは1988年で、
2011年4月1日時点で2万名を超す臨床心理士が誕生しています。
臨床心理士の資格は5年ごとの更新制となっており、
一定の研修を受けながら、知識やスキルの洗練に務めなければなりません。

日々の鍛練が必要なことはどの資格においても同じですが、
臨床心理士はさらに人間性の向上など、
人から求められ頼られる人間であることも強く要求されます。
また、臨床心理士の活躍の場は幅広いので、
どのような場所で人々のサポートをしていくのか、
自分なりに目標設定をして経験を積んでいく必要があります。

臨床心理士の活躍の場

ここで、その活躍の場の一部を紹介してみましょう。
精神科・心療内科・小児科などでカウンセリングを担当するほか、
病院内に特別のカウンセリング室が設けられ、
慢性疾患の患者や障害者や高齢者のケアなどに当たることもあるのです。
アルコール中毒や薬物中毒患者の治療や
比較的新しい診療科目である禁煙外来においても、力を発揮しています。

また、保健所や精神保健福祉センター、
児童相談所でDV問題や引きこもりの相談に応じたり、
老人保健施設やリハビリテーションセンターで利用者や
その家族の相談に応じることもあり、引く手あまたの状態です。

そのほか、学校のスクールカウンセラーや企業の健康管理室等で
生徒や従業員のメンタルケアをサポートしたり、
家庭裁判所や少年鑑別所などで犯罪者や更生が必要な方の支援を行うこともあります。

もちろん、個人や法人形態で幅広く悩みに応えるカウンセリングを行ったり、
心理学セミナーを開催するといった活動に資格を活かしている人もいます。

ストレス社会といわれる日本では、小さな子供からお年寄りまで年代や性別、
立場や役職等を問わずメンタル面で不安を抱えている人がおり、
臨床心理士はまさに時代に求められた仕事で、今後も必要とされ続けることでしょう。