医師を取り巻くさまざまな問題

最近の医師の働き方や業務の内容に見て取れる傾向を追ってみたいと思います。
1つにはチーム医療があり、
そしてもう1つは女性医師の処遇改善が喫緊の課題となっていることです。
チーム医療も多様化しています。

従来、チーム医療といえば、重大な疾患や重い状態にある患者さんに対し、
数名の医師とそれを補助する看護師等がチームを組んで、
最善を尽くすというものでした。
治療方針や手術の方法などについて、医師たちによる検討会が行われ、
その方針に基づいて治療を行っていくものです。

最近のチーム医療ではチームを構成するスタッフが多様化する傾向にあります。
例えば、NST(栄養サポートチーム)では、食事が病気の予防や改善・回復に
大きく影響するという観点から、医師、看護師、管理栄養士、薬剤師が
一体となって、必要となる食事や栄養の分析や、食事メニューの考案、
食事指導を行い、患者さんをサポートします。

さらに、糖尿病や脳梗塞等の生活習慣病罹患者に対しては、作業療法士等が加わり、
運動機能の改善や運動量増加による体質改善を行うなど、院内のあらゆる部門の
医療スタッフが連携して治療やリハビリが行われるようになっています。
また、在宅医療においても、この傾向が見られるのです。
以前は往診に赴くのは医師と看護師のペアというのが一般的でした。
また看護と介護の棲み分けが行われ、寝たきりの患者さんであれば、
医療チームと介護チームが別々に訪問し、特に患者の容態に関する
共有も行われないというのが通例でした。

医療チームの拡大

しかし、この垣根が取り払われ、
医療と介護が一体化した在宅医療チームが組まれるようになってきています。
医師、看護師、介護福祉士やホームヘルパーのほか、
薬剤師、栄養士等も加わります。
そして、現在では地域医療を担うのは地元密着の薬局からと、
薬局が薬剤師を派遣して在宅医療に取り組むケースも増えてきました。
薬の飲み忘れや飲み過ぎなどの投薬管理や副作用に関する説明は、
医師や看護師よりも薬剤師のほうが慣れています。
それぞれが自分の専門分野で力を発揮し、連携し合うことが患者さんや
ご家族にとってベストと考えられ始めているのです。
そのため最近の求人でも、医師・看護師・薬剤師ともに、病院勤務や
薬局勤務といった求人だけでなく、在宅医療の求人が目立つことが分かります。

女性医師の働き方

もう1つの傾向である女性医師の処遇改善についても知っておきましょう。
女性の社会進出にともない、女性の働く環境の改善についてはあらゆる業界で
言われ続けていることですが、医師の世界では特にその問題が
今大きく突きつけられています。

専門職として患者の命を預かる医師には、夜勤や緊急の呼び出しし、
緊急対応や手術などによる長時間の時間拘束はつきものです。
となると女性医師にとって、そのキャリアを守るためには、
時に出産や子育てを断念するか、もしくはキャリアを捨て、
育児に専念するという道しかないという現状がありました。

一般企業のように、今日は子供が熱を出したから休みます、
子供が小さいので呼び出しには応えられませんというわけにはいかなかったからです。
医師不足の状況もありますし、産婦人科や内科など
女性医師に対するニーズは少なからず患者さんからもあります。

女性医師を確保するため、一部の大学病院等で、
その処遇を改善する取り組みが始まっています。
産休は当然取得できる、子供が小さいうちは夜勤が免除される、時短勤務が
許される、院内に託児所を設ける、勤務時間内の授乳も可能といったものです。

これにより女性医師が出産により医師であることをあきらめなくて済むようになり、
かつ、一度退職を余儀なくされた医師の復職を支援しようというものです。
求人広告でも女性医師の復職支援の文字をよく見かけるようになっています。